『竜の王女シマー』(ローレンス・イェップ)



気位の高い竜の王女シマーと、力は弱いが勇気と優しさを持ち合わせた人間の少年ソーンは、シマーの故郷の海を盗んだ魔女を追うため共に旅をすることになった。
中華風異世界での冒険譚。何よりもプライドを優先するシマーと、そんなシマーに恩と友情を感じついて行くソーンというふたりのギクシャクした間柄が面白いです。このふたりの距離が縮まる様子が物語の軸になっています。謝ったり礼を言うことに不慣れなシマーが、プライドを保ったままソーンに寄り添う姿も見物です。ソーンもまた意地っ張りで弱音を吐かないために、お互い様のいいコンビニなっているのですけどね。
孫悟空を彷彿させるサルや訳ありの魔女シベットなど、ほかの登場人物も一癖も二癖もあるものばかりで続きが気になるのですが、残念ながら全4巻の第1巻しか日本で刊行されていないようなのです。これまた面白いと言い続けていればいつの日か!! となるでしょうかねえ。
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『猫語の教科書』(ポール・ギャリコ)



ある日、編集者の元に届いた原稿は、猫による人間の家をのっとる方法が書かれたものだった。
若き猫に送る猫の手による猫の教科書。如何に人間をトリコにして、人間の家をのっとり快適に過ごすのか。猫は猫であるだけで魅力は充分にあるのだから、その魅力をしっかりと活用すべし。そして人間とはうまくやっていこうではないか。そのような内容が実に魅力的な語り口で記されています。そうです、何故作者である猫が人間の編集者にこれを送り人間の目に猫の秘密を明かしたのか。それはこの原稿を解読したポール・ギャリコも言うように、人間が猫とうまく付き合っていくコツが示されているのでしょう。猫の魅力を享受することで人間は猫と共に快適に過ごすことができる。ならば猫の魅力が充分に示せるように、これこれこういうことに気を付けてねという猫からのメッセージなのでしょう。
猫と普段から共に過ごしている人には、ああその通りと共感するものなのでしょうか。猫との接点が全くない身にも猫にトリコにされそうな魅力がありました。

『悪魔とプリン嬢』(パウロ・コエーリョ)



「条件さえ整えば地球上のすべての人間がよろこんで悪をなす」
田舎町ヴィスコスを訪れた旅人が、バーで働くプリン嬢にある計画を打ち明ける。1週間以内に町の誰かひとりの死と引き換えに、住人全員が生活をなすだけの金の地金を与える。そしてそれを住人に伝えるのはプリン嬢の役目だと言うのだった。
善と悪の葛藤。悪魔の誘惑、天使の加護。娘と旅人の心理戦であり、町の住人全員の心理戦であり、自分と自分の心理戦である。そこに宗教に身を投じてきた神父の想いや、夫を亡くした後町を見守ってきた老婆の想いや、権力にしがみつく町長の想いなどが絡み合います。
テーマは単純明快。だからこそひとりひとりの想いが重くのしかかってきます。


『ねこに未来はない』(長田弘)



詩人長田弘による猫エッセイ。猫を飼っていた日々を綴っていますが、今の感覚で猫好きの人が読むとショックを受けるかも知れません。時代がもつ猫観の違いが興味深くはありますが。
猫の気ままさ、気まま故の愛らしさが軽やかな筆で書かれています。しかし、だからこそ不意に訪れる別れの空虚さも大きいのですが。昭和40年代の風俗小説として読んでも面白いかも。
巻末にはアラン・シリトーの「ママレード・ジムの華麗な冒険」も紹介されていますが、これまた軽やかな文体が長新太のイラストと相まって楽しいです。

『魔法使いが落ちてきた夏』(タカシトシコ)

本自体の装丁は児童書然としていますが、文体や設定、ストーリー展開などはライトノベルの様相を呈しています。異世界からやって来た魔法使いと共に戦う少女、漢字にカタカナのルビを振り詠唱呪文を唱えるなどなどワクワクさせる要素が詰め込まれています。擬音語擬態語を多用し、イキオイで読ませる手法はある意味で映像的であり、これを元にまんがやアニメにすれば面白いだろうなと思わされます。

プロフィール

大吉

Author:大吉
物語の魅力を伝える古本屋をやっています。

好きな作家は、有栖川有栖、田中芳樹、江戸川乱歩、倉知淳、恩田陸、北村薫、宮部みゆき、京極夏彦、小川洋子、殊能将之、梨木香歩、泡坂妻夫、東川篤哉、綾辻行人、長野まゆみ、大崎梢、恒川光太郎、吉田篤弘、上橋菜穂子、岡田淳、R・ダール、E・ケストナー、などなど。気になりゃ何でも読みます。

子どもたちに物語の面白さを伝える、そんな駄菓子屋のような古本屋を目指します。

「古本 大吉堂」大阪市住吉区遠里小野5−3−1




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