『ネズミの時計屋さんハーマックスの恋と冒険1 〈月の樹〉の魔法』(マイケル・ホーイ、雨沢泰・訳)



ネズミの時計職人ハーマックスの元にやって来た飛行士リンカ。彼女はハーマックスに壊れた懐中時計の修理を頼むのだった。リンカに一目惚れをしたハーマックスは懐中時計を修理するが彼女はいつまでも取りに来なかった。そんなある日彼女の代理人だという怪しげな男がハーマックスの元に現れた。
ネズミの時計屋さん、しかも恋と冒険というタイトルから、甘やかなファンタジーを想像して読み始めたのですがハードボイルド的展開が待っていました。
人死に(ネズミ死に?)も出る物騒な事件に巻き込まれたハーマックスですが、リンカへの恋心を支えにずんずんと突き進むのです。おやじネズミと揶揄されるハーマックスですが、想いは一途で一直線です。怪しい男を尾行しリンカがさらわれるところを目撃し、重要な情報を入手し敵地に乗り込んでいきます。
その展開の小気味いいこと。訳者あとがきによると作者が海外出張の妻に毎夜送ったメールが元になっているとのこと。なので1章1章が短く、テンポのいいセリフの応酬や場面転換も軽やかなのです。かなり思い切ったストーリー展開なのですが、それも気にならず一気に読まされます。
ハーマックスたち動物が人間さながらの生活をしているのですが、その舞台はこの世界のどこかなのか、全く違う次元の世界なのかはハッキリとしません。この世界で100年ほど前の感覚でしょうか、その世界観も楽しめます。ハーマックスは鳥かごにテントウムシのターフルを飼っているのですが、ネズミとテントウムシの大きさの対比はどうなるのだろう? などと考えながらその世界に浸るのも楽しかったです。
このシリーズは第3作まで出ているのだとか。これはまたまた読まねばならない本が増えました
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『ボーイズドリーム』(アレックス・シアラー、鈴木彩織・訳)

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有名になりたいウィルモットは、フライドポテト早食い世界記録に挑み『世界記録事典』に載ろうとするのだった。
おバカ男子の愛らしさは世界共通のようです。兄弟喧嘩ひとつとっても、ジャーマン・ポーク目玉爆撃に対してウェールズ式バーン、プラス、ダブル・スズメバチ特大針攻撃という必殺技の応酬になるそんなおバカ男子です。
有名になりたい。新聞やテレビで取り上げられたい。世界記録を作りたい。そんな男子なら誰でも夢見ることをウィルモットは実際に挑戦してしまいます。
世界記録を作るための特訓を行ない、スポンサーを見付けて、マスコミに連絡する。そして記録に挑戦する。バカバカしくも熱い気持ちに押されて展開していく様が楽しいです。妄想だけに納まらない行動力にある意味感心させられます。
何より何が起こってもめげないウィルモットの姿が、そのバカバカしさを越えて素敵にすら見えさせてしまうのですね。これは世界中のおバカ男子への応援歌かも知れません。

『魔法がいっぱい!』(ライマン・フランク・ボーム、佐藤高子・訳)

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オズの魔法使いのボームによる連作ファンタジー。ボーム自身の記念すべき処女作でもあります。
舞台となるモーの国は太陽は沈まずお菓子でできており、そこに住む人々は年も取らなければ死にもしない。必要なものはなんでも木に生っている。そんな夢の世界のような理想郷なのですが、そこではアレコレと騒動も起こるのです。
王様の首がムラサキドラゴンに飲み込まれたり、モーの国に鋳鉄の大男が攻めてきたり、癇癪持ちの姫の癇癪を治すために魔女の元に旅立つ若者がいれば、足の親指を盗まれた姫は取り返そうとする。アベコベの国や巨人の国サル人間の国に迷い込んでの騒動などなど。
でもどんな騒動に巻き込まれても、大変な目に遭っても、基本的にみんな幸せに楽しく過ごしているのです。なので読み終えた時のこちらの気持ちも楽しく幸せになっているのです。

『りこうすぎた王子』(アンドリュー・ラング、福本友美子・訳)



古今東西の昔話の要素を詰め込んだようなお話です。そのため昔話のパロディのようなメタ構造も見え隠れして、これが100年以上前に書かれたのかと驚いたのです。
プリジオ王子が生まれた時に妖精に与えられたのは、数々の魔法のアイテムと「りこうすぎる」ことだった。りこうすぎるために国中の人々から嫌われることになる王子を変えたのは、美しいおじょうさまとの出会い。恋に落ちたことにより今まで気付かなかったことに気付き、世の不思議なことにも目が向くようになるのです。
この流れが素敵なのですね。恋をすることにより相手を思いやることができるようになり、魔法も信じることができるようになる。ただそれだけで王子自身の性質はそのままなのに、がらりと雰囲気も人当たりも変わってしまう。教訓めいたアレコレよりも恋心なのです。
その後の展開も魔法のアイテムをフル活用して向かうところ敵なしの状態で、次々に難題を乗り越えていくのが実に爽快なのです。そしてオチの付け方の素敵なこと。ああ面白かったと本を閉じる喜びに満ちた一冊です。

『トンネル』(ロデリック・ゴードン、ブライアン・ウィリアムズ)



ウィルは父親とともに地下深く穴を掘り、地底から出てくる様々なものを採掘していた。その父親が行方不明になった時に新たなトンネルを掘っていたことを知ったウィルは、親友チェスターとともにそのトンネルを掘り進んでいくのだった。
地下深くにある都市に住む人々、行方不明の父親を探す冒険、出生の秘密、敵地からの脱出などなど、冒険活劇のドキドキワクワクの要素はこれでもかとあるのです。しかしこれから冒険が始まると思われた瞬間、犯罪者扱いで捕まり拷問に近い所行を受けたり、とある人物の裏切りや、計画の失敗とどれもこれもがうまくいかず絶望に繋がっているような展開が待っていたのです。そのため読んでいて爽快感が得られず、八方塞がりの閉塞感に襲われたのです。この絶望感や閉塞感を味わうのが物語のメインとなるものなのかと思わされます。
しかしウィルはどんな状況でも好奇心を失わないのです。未知なものに対する興味を失いません。それこそがこの物語の中の一番大きな希望なのかも知れません。
最後に取って付けたかのような希望が描かれていますが、それも目の前の大きな絶望に飲み込まれる寸前という感じもあります。しかし決して面白くないのではないのです。この絶望感と閉塞感の中でウィルがなんとかして前へ進もうとする想いが、ページを繰る手を押し進めるのです。それでも上下2巻読み終えるのに、いつもの倍以上の時間が掛かってしまいましたけどね。
プロフィール

大吉

Author:大吉
物語の魅力を伝える古本屋をやっています。

好きな作家は、有栖川有栖、田中芳樹、江戸川乱歩、倉知淳、恩田陸、北村薫、宮部みゆき、京極夏彦、小川洋子、殊能将之、梨木香歩、泡坂妻夫、東川篤哉、綾辻行人、長野まゆみ、大崎梢、恒川光太郎、吉田篤弘、上橋菜穂子、岡田淳、R・ダール、E・ケストナー、などなど。気になりゃ何でも読みます。

子どもたちに物語の面白さを伝える、そんな駄菓子屋のような古本屋を目指します。

「古本 大吉堂」大阪市阿倍野区王子町3−4−4




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