『私と踊って』(恩田陸)

私と踊って

恩田陸短編集。バラエティに富んだ作品が19編収録。
恩田陸の短編は、物語世界をスパッと切り取った一部分を見せられている気になります。背後、いや周囲に大きな世界の広がりを感じさせられます。なので物語のプロトタイプやプロローグのような雰囲気を持ったものもあります。今までにも短編から長編へと繋がったものもありますし。そしてそれぞれ趣向が異なれど、どれも濃厚なまでに恩田陸の世界なんですね。次々と世界は変わるのに根源となるものは変わらない、そんな印象を受けます。
お気に入りは、「火星の運河」、「私と踊って」どちらも幻想的であり美しい。「少女曼荼羅」のある種のバカバカしさも素敵。そして「東京の日記」は確かに怖い。物語は世界を映す鏡。こわいこわい。
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『蒲公英草紙』(恩田陸)

蒲公英草紙―常野物語 (集英社文庫)

20世紀初めのとある農村。旧家槙村家の末娘聡子のお話相手となった峰子が見る世界。他人の記憶や感情をそのまま「しまう」ことのできる春田一家が槙村家にやってくることから話が動き出すのですが、特殊能力が話の肝になる訳でなく、農村のそして旧家の暮らしがじっくりと描かれます。それは峰子を語り手とした効果でしょう。そのため却って春田一家の特異性が浮かび上がってきます。
よくは判らないけれど我々とは違う能力を、そして運命を抱いている人たちを少し離れて見るのですね。特殊能力を有する常野一族を描く大きな物語の一端という感じは、恩田陸特有の雄大さを感じさせられます。前作に比べてSF風味は淡いものですが、20世紀初めの農村の人々の風景には心惹かれます。世界がきな臭くなっていく中で前に進んでいく人々が描かれます。

『夢違』(恩田陸)

夢違 (角川文庫)

夢を記録し映像化することができるようになった時代、それを解析する夢判断を職業とする浩章の元に奇妙な事件が舞い込む。小学校での集団パニック、そして神隠し。その周辺には亡くなったはずの結衣子の影が。彼女は予知夢を見る者として注視されていたのだった。
次から次へと奇妙なファクターが沸き上がり、それに翻弄される様が実に怖かったです。しかもその全てに明確な理由や正体が述べられる訳でないので、翻弄されっぱなしになる怖さがあります。この感覚は恩田陸独特のものでしょう。風呂敷を広げたまま終わるというのが、こんなにも怖さを引き出すのかと思い知らされました。どうなるか判らないという怖さを残して終わるのが何とも言い難い読後感を残します。
他人の夢や白昼夢、監視カメラの映像などに現れる結衣子の姿というのも怖さを引き立てます。ある種のホラークイーンのような存在なのかも。実際には夢からの解放を願う悲しさが増しますが。

『木洩れ日に泳ぐ魚』(恩田陸)

木洩れ日に泳ぐ魚 (文春文庫)

恩田陸お得意の「記憶の中の事件」を扱う物語。
翌日にはそれぞれの未知を行く男女が最後の夜を語り合う。ふたりの関係も徐々に明らかになり、一年前にふたりが遭遇した事故死についても考察される。ふと思い起こされる情景は何を意味していたのか。自分は相手のことを本当はどう感じどう想っていたのか。ちょっとした切っ掛けで今まで築き上げていた関係性も想いも崩壊してしまう怖さ。章ごとに男女それぞれの視点で描かれるためお互いの気持ちの振れ方が見て取れ面白いです。
恩田陸はごてごてに飾り立てた装飾過多な物語も面白いですが、こういう心理戦的なものもいいですね。

テーマ : 読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

『ロミオとロミオは永遠に』(恩田陸)

ロミオとロミオは永遠に (ハヤカワSFシリーズ Jコレクション)

日本人だけが地球に残り膨大な廃棄物の処理に追われる未来。エリートへの路として全国から大東京学園にやってくる少年たち。そこには過酷な生き残りレースと前世紀のサブカルチャーにまみれたアングラの世界が待っていた。
恩田陸は何でもありの作家だとは思っていましたが、こういうのもありだとは。昔の少年まんがのようなバカバカしい設定を至極真面目に取り組んでいます。巨大洗濯機で全身洗われるだとか、空中椅子取りゲームだとかギャグなのかと思いきや、しっかり青春ありSFありの一大エンターテインメントに仕上げる力業には脱帽。思い切ったオチの付け方もこの作者ならではかも。

テーマ : 読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

プロフィール

大吉

Author:大吉
物語の魅力を伝える古本屋をやっています。

好きな作家は、有栖川有栖、田中芳樹、江戸川乱歩、倉知淳、恩田陸、北村薫、宮部みゆき、京極夏彦、小川洋子、殊能将之、梨木香歩、泡坂妻夫、東川篤哉、綾辻行人、長野まゆみ、大崎梢、恒川光太郎、吉田篤弘、上橋菜穂子、岡田淳、R・ダール、E・ケストナー、などなど。気になりゃ何でも読みます。

子どもたちに物語の面白さを伝える、そんな駄菓子屋のような古本屋を目指します。

「古本 大吉堂」大阪市住吉区遠里小野5−3−1




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