『いしいしんじの本』(いしいしんじ)



作家いしいしんじの本にまつわるアレコレ。書評や解説文から本の思い出話などなど。本の余白に鉛筆を走らせながら読む。そこに書かれるのは無意識から出て来る形。書いた本人も思いも寄らない形が浮かんで来る。本を読み終えたあとページを繰り直すと現れる形は、読んだ作品と読み手の本質が混じり合ったものなのか。
そんな感じで述べられるので、対象となる本を読んでいなくとも心に響いてくるものがあります。読んだ本を材料として「いしいしんじの本」というものになっているのでしょう。
いしいしんじ本人のことも綴られており、どんな話を作りたいかという問いに対して「百年前のイヌイットのこどもでも、二百年後のアイルランドのおじいちゃんでもおもしろいな、とおもってもらえるはなし」と答えられています。これこそ物語の持つ力そのものなのだろうなと感じ入ったのでした。
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『熊にみえて熊じゃない』(いしいしんじ)



雑誌『クロワッサン』に連載されていたエッセイをまとめたもの。「ごはん日記」をはじめ、よそのエッセイなどでも書かれていたエピソードも多いのですが、ここでは物語作家としての面が強く感じられました。
その時その時に起こったこと出来事を、心身から溢れ出す言葉で紡ぐ。そんな感じを受けました。まあ中には絶対面白おかしく話を盛り上げているのだろうと思われるものもありますが、いしいしんじの目と心を通した事実なのかも知れません。
いしいしんじの書くエッセイはいつも、いしいしんじという水にひたひたと浸っているような心地よさがあります。書かれていることに共感できないものでも、そのように感じるのは不思議です。

『京都ごはん日記』(いしいしんじ)



お馴染みいしいしんじのごはん日記。京都に移り住まれてからの日々が綴られています。創作してレコードを磨いて人と会いごはんを食べる。一日一日、その時その時が文章で切り取られています。
日記なので物語よりもエッセイよりも、作家自身の姿が出ています。そのまんま書かれているので「説明」が極端に少ないのです。以前出ていた文庫を読んだ時は、これは誰!?というのが多々あったのですが、今回は巻末に人物や場所、お店の紹介が付いていて便利!
いしいしんじの言葉は濃密で、短い文章でも読むと体力を使います。なので他の本を読みつつ合間合間に読んでいました。それでも文章が身体中に浸透し、体全体がいしいしんじに染まるのです。その感覚が楽しく面白い読書体験でした。

『四とそれ以上の国』(いしいしんじ)



四国を舞台にした短編小説集。しかし、いしいしんじのこと、ただの四国に納まりません。人形浄瑠璃に心奪われ、英語教師は鉄道で南へ行き、巡礼の道を人々は行き、渦を見て、逃げた藍を追う。幻想というか、現に夢がもれ出ているのか、妖しげな世界が繰り広げられています。
それは、ありとあらゆるものから物語が溢れ出ているからなのかも。四国の人々、土地、歴史、文化、伝統、交通、産業などなど。どれもこれもが物語となり、何もかもから物語が溢れ、それぞれが絡み合う。全ての物語の色が混ざり合いながらも、それぞれの色を残し主張し合う。あたかもマーブル模様を成すように。
だから、主軸となる物語を見失ったり追えなくなることもありました。溢れる物語に翻弄され溺れてしまったのです。また再読すれば、新たなる物語を掴むことができるのでしょうか。

『ある一日』(いしいしんじ)

ある一日

恐らくは作者自身の、ある夫婦の出産の一日。日常からはじまり陣痛を経て出産へ至る過程が、実に濃密にでも淡々と描かれています。独特の言葉遣いや、こちらとあちらを行き来する文章に圧倒されながら、ずんずんとお腹の底から力が湧き出てくるかのような気持ちにさせられます。
視点は夫から妻へ、妻から夫へと移り変わり、そして生まれて来る子の視点へと繋がります。それは生き物の持つ道であり、土地が結んだ道でもある。
最後にバースプラン(どのように出産したいかを記したもの)が提示されるのですが、それを読むと今まで通った道をもう一度振り返りたくなります。何とも力に満ちた物語でした。
プロフィール

大吉

Author:大吉
物語の魅力を伝える古本屋をやっています。

好きな作家は、有栖川有栖、田中芳樹、江戸川乱歩、倉知淳、恩田陸、北村薫、宮部みゆき、京極夏彦、小川洋子、殊能将之、梨木香歩、泡坂妻夫、東川篤哉、綾辻行人、長野まゆみ、大崎梢、恒川光太郎、吉田篤弘、上橋菜穂子、岡田淳、R・ダール、E・ケストナー、などなど。気になりゃ何でも読みます。

子どもたちに物語の面白さを伝える、そんな駄菓子屋のような古本屋を目指します。

「古本 大吉堂」大阪市住吉区遠里小野5−3−1




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