『中野のお父さん』(北村薫)



出版社に勤める娘と高校の国語教師の父。日々の生活の中で「あれ?」「おや?」と思ったことを父に話すと、あっという間に謎が解かれる。
北村薫お得意のパターン。まるで伝統工芸のように、きれいに納まるところに納まっているという感じです。1話ごとの分量も少なめなので、より一層精錬された感じがあります。
出版社が舞台なので文学的謎もあるのですが、短くまとめられつつ読み応えがあります。出典を詳らかにして、謎に迫っていく行程すら美しく楽しいです。こういう本の読み方を教えてもらえたら楽しいでしょうね。
父と娘の関係がベタベタした感じでなくどこかサバサバしつつも、信頼と愛情で繋がっている様が素敵です。北村作品としては珍しく体育会系の娘というのもアクセントになっていますね。
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『いとま申して 「童話」の人びと』(北村薫)

いとま申して 『童話』の人びと (文春文庫)

作家・北村薫が父の遺した日記を読み解く。そこには昭和初期文学青年だった父の姿があった。
本を読み映画や舞台を観て感化されて自らも筆を執る、そんな文学青年の姿が描かれています。昭和初期という時代を文学(それも特に児童文学)を志す若者の視点で描くとこうなるのかと感服。日記の行間を埋める作業にも脱帽します。ひとつの事例を別の資料から読み解くという方法も示されており、これこそ勉学の面白さだなと思い知らされます。いつもながら北村薫の本を読むと、もっと本を読みたいもっと勉強したいという気にさせられます。

テーマ : 読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

『ひとがた流し』(北村薫)

ひとがた流し (新潮文庫)

北村薫の作品は読んでいてとても心地いいです。でも決してふわふわと温かいだけではないのですね。
人と人の繋がり。親子の愛、男女の愛、そして友への愛。あなたがいたから、私がいる。実に素敵な物語でした。読んでいて、無性に人恋しくなってしまったのですが。離れていてもそばにいる。いいなあ。

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ジャンル : 本・雑誌

『飲めば都』(北村薫)

飲めば都

さすが北村薫の巧さと面白さです。女性編集者を主人公に配し、お酒を絡めて物語を進めていきます。酔っぱらい泥酔者お酒の失敗も扱っているのに下品にならないのは、この作者ならではでしょうな。
読む前は日常の謎系だと思っていたのですが、そういう訳ではなく(端々にミステリ的面白さはあるにせよ)がっかりしていたのに、いつの間にか話にのめり込み引き込まれていました。男女の出逢いや機微なんかもさらりと描かれて実に読後感が爽やかです。うん、いいなあ。
しかも主人公が編集者だから本にまつわる話も多く、本好きにはその部分だけでも堪りません。しかもラストで語られる本に対する想いに胸が熱くなりますね。

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『鷺と雪』(北村薫)

鷺と雪 (文春文庫)

昭和初めの良家のお嬢さまと、お抱えの女性運転手が謎に対面する物語。シリーズ最終巻。ラストが「二・二六事件」に繋がることは判っていましたが、このように繋げるとは。そしてこの為の物語だったのかと息を飲みました。北村薫はロマンティストでありながら、現実主義者ですね。
時代がもつ雰囲気の描写も楽しく、当時の文化生活が垣間見えるのが面白いです。しかも主人公が上流階級に属する身ですから、自然と触れるものも当時の最先端であるのも嬉しいところ。それでいて主人公の性格や最上級とまでいかない階級のおかげで、庶民的感覚にも目を向けることが出来るのが、一層印象の良さを与えているのでしょう。だからこそ余計に、これからの時代の波を知る身として、ラストに込められた意味が重く募ります。
ミステリとしても面白く読みました。華族主人の失踪の謎、良家の少年は夜中の上野で何をしていたのか、いるはずのない人物が写真に収まっていた訳は。謎の奥に秘められた人々の想いにも心配られています。

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プロフィール

大吉

Author:大吉
物語の魅力を伝える古本屋をやっています。

好きな作家は、有栖川有栖、田中芳樹、江戸川乱歩、倉知淳、恩田陸、北村薫、宮部みゆき、京極夏彦、小川洋子、殊能将之、梨木香歩、泡坂妻夫、東川篤哉、綾辻行人、長野まゆみ、大崎梢、恒川光太郎、吉田篤弘、上橋菜穂子、岡田淳、R・ダール、E・ケストナー、などなど。気になりゃ何でも読みます。

子どもたちに物語の面白さを伝える、そんな駄菓子屋のような古本屋を目指します。

「古本 大吉堂」大阪市住吉区遠里小野5−3−1




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