『最果てアーケード』(小川洋子)

ひっそりとした世界の窪みのようなアーケード。店々に並ぶ使用済みの絵葉書、義眼、徽章、ドアノブなどが、お客が来るのを待っている。
小川洋子の作品は「何かを失なう物語」という印象があります。今作も「死」がここかしこに満ちています。商品自体、過去誰かが所有していたものが多く、剝製のための義眼や遺髪を用いたレースは死に直結しています。
主人公の少女は友と死別し、母を病気で亡くし、父を火事で亡くします。そして少女自身も生のあいまいさを感じるのです。生と死をつなぐものとして品々があり、店主は生と死をつなぐために客に売り、少女は商品を運び生と死をつなぎとめる。そんな生死のあわいを表す場所としてアーケードは、ひっそりとしながらもこれ以上ないくらい存在感を示しています。
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『おとぎ話の忘れ物』(小川洋子)

([お]8-1)おとぎ話の忘れ物 (ポプラ文庫)

おとぎ話をモチーフとした樋上公実子のイラストを元にした短編集。駅の忘れ物保管室に忘れ去られたおとぎ話を集めたものという物語の背景がまた彩りを与えます。
イラスト自身エロチシズムを帯びた妖艶なものであり、物語もそんな様相を帯びます。肉感的でありながら幻想的というのは、じつに小川洋子らしさでしょうか。

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ジャンル : 本・雑誌

『人質の朗読会』(小川洋子)

人質の朗読会 (中公文庫)

遠い異国の地で反政府ゲリラによって拉致された人々。彼らは思い出を書いて朗読し合う。自分の中にしまわれている過去に耳を澄ませ語るのだった。
ひとつひとつの物語は実に小川洋子らしいものです。大家の老婆と食べるビスケット、様々な会合が行われる談話室、一心不乱に作られるコンソメスープ、葬儀会館の課長から貰った花束。ごくありふれたことを描いているようでありながら大きな虚構に包まれているような妙な感覚。それが「人質の朗読会」という舞台設定を与えられることにより、ただ単に短編を集めたものとは異なるイメージが広がります。
もしかすると最後に何か仕掛けがあるのではとも思いましたが、そういうこともなく最後は朗読の聞き手の思い出によって締める。それがまた素敵な彩りを加えてくれます。

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『原稿零枚日記』(小川洋子)

原稿零枚日記 (集英社文庫)

とある作家の日記。苔料理を食べ、小学校の運動会に忍び込み、あらすじを語り、生活改善課の職員はトランペットを吹き、現代アートの祭典では人が消えていく。
夢と現の狭間をたゆたう小川洋子ならではの作品でした。幻想的でありながら肉体的である筆致に圧倒されます。こういう世界に浸れるのも小説の持つ魅力ですね。

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『みんなの図書室2』(小川洋子)

みんなの図書室 2 (PHP文芸文庫)

作家小川洋子によって紹介される様々な本たち。読書の喜びを再認識させられます。
読んだことがある本でも新たな魅力を感じ再読したくなりますし、読んだことのない本や、タイトルすら知らなかった本には出逢う喜びを与えてくれます。しかも古今東西の作品、小説だけに限らず紹介されているのも嬉しいです。
年の初めに読み、今年一年の読書の幕開けとしてみました。面白い本に出逢えますように。

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プロフィール

大吉

Author:大吉
物語の魅力を伝える古本屋をやっています。

好きな作家は、有栖川有栖、田中芳樹、江戸川乱歩、倉知淳、恩田陸、北村薫、宮部みゆき、京極夏彦、小川洋子、殊能将之、梨木香歩、泡坂妻夫、東川篤哉、綾辻行人、長野まゆみ、大崎梢、恒川光太郎、吉田篤弘、上橋菜穂子、岡田淳、R・ダール、E・ケストナー、などなど。気になりゃ何でも読みます。

子どもたちに物語の面白さを伝える、そんな駄菓子屋のような古本屋を目指します。

「古本 大吉堂」大阪市住吉区遠里小野5−3−1




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