『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』(村上春樹)

なんとも妙な読後感をもたらす物語でした。
多崎つくるは高校時代に仲のよかった5人組グループから、突然理由も告げられずに絶縁される。そのことが、つくるの中でしこりになっているのではないかと言われ、つくるは絶縁状態となった友人を訪ねることにする。
20歳の時に別れて36歳で再会する。一度壊れた関係性を客観視するには、それだけの時間が必要だということだろうか。ある意味これは「自分探し」の旅なのでしょう。自分の源となるものの正体を見極めるとまでいかずとも眺めるための物語なのでしょう。
相変わらず特殊性を普遍性に置き換えるような文章と、突飛な比喩によって煙に巻かれた感じがあります。読んでいる最中は実に心地よいのですが、読み終えてみると何だか訳の判らないものが残っています。この判らないものが、この物語の芯なのかも知れませんが。
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『神の子どもたちはみな踊る』(村上春樹)

神の子どもたちはみな踊る (新潮文庫)

阪神淡路大震災直後を舞台とした6つの短編集。しかし直接的には震災に触れていません。直接的ではないからこそ考えさせられる、感じさせられるということもあるでしょう。
短い物語の中にスッと挿話が滑り込む構造も面白いです。挿話自体が大きなメタファーになるのですね。そしてその挿話は静かな物語に静かに、けれども大きく揺さぶりを掛けてきます。何を暗示しているのか正確に読み取れていないかも知れません。きっと読み取れていないでしょう。でも何かが揺すぶられた感覚だけは残っています。
お気に入りは「タイランド」と「蜂蜜パイ」静かな夜にゆっくりと再読したくなるような読後感でした。

『翻訳夜話』(村上春樹、柴田元幸)

翻訳夜話 (文春新書)

翻訳物を多く読む訳でなく、著者に思い入れがある訳でもなく、なのに何故か気になり手にとり気になり読み始めてみると面白い。グイグイ引き込まれながら読みました。
翻訳とはどういうことかを、まずは大学のワークショップの学生の前で、次に翻訳家を目指す若者の前で、そして同じ短編小説をそれぞれが翻訳した作品を挟んで若き翻訳家の前で質問に答える形で示していく。
それぞれの立場も違えば取り組み方も変わる。しかし翻訳という行為そのものを楽しんでいる様子はふたりから溢れています。そこに強く大きく引き込まれたのでしょう。

『1Q84 BOOK1、BOOK2』(村上春樹)

1Q84 BOOK 1
1Q84 BOOK 2

あれだけ話題になった作品を今になって読むのが、僕らしいというか何というか。しかもわざとBOOK2までをまず読みました。元々ここまで刊行されて後に3が出たので、その感覚で読もうと思いまして。
静謐で美しい物語。それが読後の感想です。村上春樹作品はほとんど読んでいないのですが、どの作品を読んでも、なるほどこれは人気が出るはずだと思わされます。暗喩に満ちた物語は、彼と彼女の物語があなたの物語になり私の物語となる。読者に委ねるという意味合いとは別に読者それぞれの物語を生じさせるのかも知れません。
初めの内は青豆と天吾の章に相手の名前が出てこなかったので、微妙に平行世界なのかなとも思いました。もしくは天吾が紡ぐ物語が青豆の章になるのかなと。しかしそうではなさそうだと判ったら、いつどのように二人が出逢うのかが気になっていたのですが、まさかの結末に驚かされながらもこれしかないという締め方に感服しました。しかしそれもまだ続きがあると知っている身だからこその感想なのかも知れません。刊行時に読んだのならまたラストに味わう感覚は変わったのかも知れません。
自分の中で少し熟成させてからBOOK3を読もうと思います。

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ジャンル : 本・雑誌

『海辺のカフカ』(村上春樹)

海辺のカフカ (上) (新潮文庫)

海辺のカフカ (下) (新潮文庫)

今更ながらの初めての村上春樹長編。なるほど面白い。読み手によって色々とメタファーを感じ取ることの出来るような書き方なので、その人にとっての「自分だけに送られたメッセージ」を読み取ることの出来る小説なのではないでしょうか。それを「自分探し」なんて言葉で表してもいいし、「文学的比喩の探求」としてもいいし。人気のあるのも、さもありなんという印象。僕自身楽しんで読みました。
ナカタさんとホシノくんのパートが、とても心地よかったです。だからあのラストには寂しく悲しかったけど、にこりと笑うことも出来ました。

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プロフィール

大吉

Author:大吉
物語の魅力を伝える古本屋をやっています。

好きな作家は、有栖川有栖、田中芳樹、江戸川乱歩、倉知淳、恩田陸、北村薫、宮部みゆき、京極夏彦、小川洋子、殊能将之、梨木香歩、泡坂妻夫、東川篤哉、綾辻行人、長野まゆみ、大崎梢、恒川光太郎、吉田篤弘、上橋菜穂子、岡田淳、R・ダール、E・ケストナー、などなど。気になりゃ何でも読みます。

子どもたちに物語の面白さを伝える、そんな駄菓子屋のような古本屋を目指します。

「古本 大吉堂」大阪市住吉区遠里小野5−3−1




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