『西巷説百物語』(京極夏彦)



今回の巷説は上方が舞台で以前も出てきた靄船の林蔵がメインとなると聞き、はてメインとなるような人物だったかなと思いましたが、するりと人の懐に入ってくる存在感があるのだかないのだかというのが魅力に思えました。
これはミステリでいうところの「倒叙もの」の手法ですね。犯人側の視点で物語が紡がれる。犯人というとしっくりと来ないものもありますが、犯人やら加害者が事件や世間や社会や人々をどう見ているのかが描かれています。
その視点は悪党のものであったり下衆のものだったりもしますし、世間とのズレに気付かなかった故の悲劇であったりもします。その事を起こしてしまった側の理屈や視点と世間の視点を繋ぐものとして怪異や妖怪があるのでしょう。あちら側に行ってしまった人の前に己の姿を映す鏡として妖怪が現れ、それでいいのか、こちら側に戻って来いと問いかける。そんな物語構造が美しいのです。
そしてこれはある種のキャラクター小説なのでしょうね。それぞれ得意技をもった人々がチームを組んでプロジェクトに取り組む。その痛快さも楽しみました。
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『死ねばいいのに』(京極夏彦)



自宅で何者かに殺害されていた鹿島亜佐美。アサミのことを聞かせて欲しいと、ケンヤは彼女の所縁の人たちを訪ねる。
アサミのことを聞いているのに語られるのは自分のことばかり、グチばかり。あいつが悪い、世の中が悪い、運が悪い、悪いことばかり。それならば…死ねばいいのに。ケンヤのもたらす一言により、世界はひっくり返る。
これはある種の憑き物落としですね。そういうことになっているという「世間の常識」に頓着しないケンヤによって身包みはがされて、グチの本質部分がさらされる構成が、形としては快活なのに残るのは厭な気持ちばかり。死ねばいいのにと突きつけられる言葉の意味も最後にひっくり返る。残った思いは、果たしていかなるものなのか…?

眩談(京極夏彦)

この「 」談シリーズは何とも言えない酩酊感があります。読んでいる内に何か居た堪れなくなるような感じがして、その原因が何かよくわからなくて、わからないから落ち着かなくて…
また本のデザインも、表紙のマーブル模様や話ごとに変わる余白、薄っすらとシミのような縞のある本文用紙と、手に取るだけで落ち着かない厭な気持ちにさせられます。これもまた本の持つ力なのでしょうが。
「歪み観音」や「シリミズさん」のような変さを突き抜けたある種の潔さをもつ話も面白かったですし、「見世物姥」や「むかし塚」の妙なノスタルジィも面白かったです。

『百鬼夜行 陽』(京極夏彦)

定本 百鬼夜行 陽 (文春文庫)

百鬼夜行のシリーズに出てきた、そしてこれから出てくる人々の物語。今までの物語の中の主要人物から脇役、ほんの少し出てきた人、それぞれにそれぞれの物語があるのだと思わされます。
闇やぽっかりと空いた穴に気付く瞬間、自分が抱いている恐怖や違和感の正体に気付いて後戻りできなくなってしまう瞬間、そこに妖怪がいる。そんな感じの怖さがあります。

『遠野物語 remix』(京極夏彦×柳田國男)

遠野物語remix

柳田國男による「遠野物語」を、京極夏彦が翻訳し編集したもの。ただ単に現代語訳されただけでなく、同系統の話をまとめ順番を整えられて編まれているので実に読み易い。以前本家「遠野物語」を挫折した身には有り難い。これを元にまた原文に触れるのもいいのかも。
東北の地方で語られた怪異譚、奇妙な話を拾い集めたもの。こんな話があった、あんなことが起こったということを、「昔話」でなく今の物語として集めた処が秀逸。ひとつひとつの話に魅力があり、物語の種のような感覚があります。ここから目を出したものも多くあるでしょう。
プロフィール

大吉

Author:大吉
物語の魅力を伝える古本屋をやっています。

好きな作家は、有栖川有栖、田中芳樹、江戸川乱歩、倉知淳、恩田陸、北村薫、宮部みゆき、京極夏彦、小川洋子、殊能将之、梨木香歩、泡坂妻夫、東川篤哉、綾辻行人、長野まゆみ、大崎梢、恒川光太郎、吉田篤弘、上橋菜穂子、岡田淳、R・ダール、E・ケストナー、などなど。気になりゃ何でも読みます。

子どもたちに物語の面白さを伝える、そんな駄菓子屋のような古本屋を目指します。

「古本 大吉堂」大阪市住吉区遠里小野5−3−1




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