『ふしぎ駄菓子屋銭天堂2』(廣嶋玲子)

ふしぎ駄菓子屋 銭天堂2
ふしぎ駄菓子屋 銭天堂2

今の子どもたちに人気のあるシリーズ物を読んでみようと手に取りました。たまたま手元にあったのが2巻だったのですが、連作短篇になっており、ふしぎな駄菓子屋でふしぎな駄菓子を買うことで起こるふしぎな物語ということで、問題なく楽しめました。
ふしぎな店で買ったもので起こるふしぎな物語というのは、よくある設定といえばそれまでなのですが、読んでみると実に真っ直ぐな物語だなと思ったのです。ふしぎな駄菓子を買って得たふしぎな能力を欲深く使えば因果応報怪談話となり、人のためや自分が前に進むために使えば心温まるお話となる。実に展開が真っ直ぐで安心して読むことのできる物語なのかも知れません。しかもそれを混ぜ合わすことによって同じパターンを繰り返すことを避け、いろんなバージョンのお話を楽しむことができる。
しかもひとつひとつのお話は短いものなので、スッと読むことができる。1冊にたくさんのお話がありシリーズも続いているので、もっと読みたいという欲求にも応えることができる。なるほど、これは人気が出る訳です。
怪盗の能力が得られる「怪盗ロールパン」病気やけがを治すことのできる「ドクターラムネキット」音楽の天才になれる「ミュージックスナック」など銭天堂は幸運のお客さまのねがいをかなえます。
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『雨ふる本屋』(日向理恵子)

雨ふる本屋 (単行本図書)
雨ふる本屋 (単行本図書)

お使い帰りに図書館で雨宿りしていたルウ子は、かたつむりに導かれ雨ふる本屋に辿り着く。そこでは忘れられた物語の種から本が作られるのだった。その物語の種に異変があると告げられたルウ子は、原因を探るため種の作られるほっぽり森へと行くのだった。

何とも不機嫌そうな女の子の絵とタイトルが印象的な本なので、前々から気になっていました。
不機嫌そうに見える理由は幼い妹のこと。病弱な妹がお母さんを独占していることから生じる想い。その想いが物語の核となります。いや物語の種と表現した方がいいのかも。
しかしその妹とのエピソードがはじめにルウ子の気持ちとして表わされるだけなので、共感として実感しにくいものとなっているのではないかとも思われます。

人間の持つ夢の力が具象化される世界の様子は楽しいです。あちらこちらにファンタジックな要素がばらまかれ、物語を華やかにしています。雨がふっている古本屋、おもちゃの汽車やくじらが移動手段となり、コウモリのレインコートで空を飛ぶ。
ルウ子ははじめから乗り気だったのではありません。それどころか拒否する気持ちも強く表わされています。しかし徐々にルウ子が楽しいと思うこととなり、そのことにより物語が展開します。その流れがあるから、読者もまたその世界を共に楽しむのでしょう。

『自閉症の僕が跳びはねる理由』(東田直樹)

自閉症の僕が跳びはねる理由 (角川文庫)
自閉症の僕が跳びはねる理由 (角川文庫)

NHKのドキュメントで彼のことを知り、この本の存在も知り気になっていたのです。やっと読むことができました。自閉症である自分のことについて世間の人が思っている疑問に答えるという一問一答の形で書かれています。

文字ボードを使ってコミュニケーションをしている姿や、その言葉のわかりやすさに驚嘆させられました。自閉症の人はコミュニケーションができないのではなく、苦手なのだということを彼の姿を見ることでわかったのです。
この本でも質問に対して真摯にそしてわかりやすく答えられています。このわかりやすい答というのは、自閉症でない読者のことを想像するからこそ生まれるものでしょう。相手のことを慮ってこその言葉でしょう。そこにも自閉症の人たちへの偏見を覆すものがあります。

もちろん自閉症の人全てが彼と同じではないでしょう。それは何事に於いても意識しなければならないことです。でも自分と違う人が自分と同じものを感じたり、やはり自分と違うものを感じている。そんな当たり前のことを知るきっかけとなる本でしょう。

『センス・オブ・ワンダーを探して』(福岡伸一、阿川佐和子)



生物学者福岡伸一ハカセとインタビューの名手阿川佐和子の対談。「センス・オブ・ワンダー」、「動的平衡」をキーワードに展開されます。
ある分野に精通しているひとの話を聞くことは面白いです。しかも専門分野の専門的なことを一般の人々にもわかる言葉で語ってくれることの素敵さ。ここでもハカセの言葉は綺羅星の如く輝きながら我々の元に届きます。しかしその言葉はキラキラしているだけではなく、血肉をもった言葉として沁み入ってくるのです。それはもちろん阿川佐和子という聞き上手の人のフィルタを通すからより一層言葉すさの浸透率が高まるのでしょう。
動的平衡の元では個々を分割して見ず、全体の流れを見る。しかしそのことは個々を軽んじることではなく、個々をしっかりと重んじることによってこそ全体が豊かになる。これは生物学に留まらず社会にも何にも全てに関わることなのでしょう。そう、それこそが動的平衡による世界なのでしょう。
子どもの時に出逢った驚きや喜びは、その人の人格形成に大きく関わる。それを示すエピソードも素敵です。そのためには子どもの心を受け止める大人の存在が不可欠である。さて自分はそんな大人になっているのだろうか。そして自分はそんな経験を経たのだろうか。しかしいつでもセンス・オブ・ワンダーの恩恵は受けることができるでしょう。ちょうどこの本を読んで生まれた心の煌めきも、センス・オブ・ワンダーなのでしょう。

『こんや円盤がやってくる』(福島正実)



まずはタイトルと表紙のイラストに心掴まれました。そして作者のお名前に見覚えが。どなただったっけ? と考えども思い出せず。はてさて? 解説を読むと初代『SFマガジン』の編集長を経て作家になられたのだとか。その流れでお名前をお見掛けしたのでしょう。
子ども向けのSFが2編収録されています。タイムスリップものと宇宙人との遭遇もの。どちらも基本となる知識を押さえつつ、ドキドキハラハラとドキドキワクワクがギュッと詰まった作品です。日常の中にポンとSF的要素が飛び込んでくるというのは、ドラえもんをはじめ子ども向けSFの常套ですが、ここでも子どもたちの日常に(それも子どもならではのシチュエーションで)不意に不思議が飛び込んできて、不意に冒険が始まります。もしかしたら自分の身にも不思議が訪れるかも。そんな気持ちになる物語です。
プロフィール

大吉

Author:大吉
物語の魅力を伝える古本屋をやっています。

好きな作家は、有栖川有栖、田中芳樹、江戸川乱歩、倉知淳、恩田陸、北村薫、宮部みゆき、京極夏彦、小川洋子、殊能将之、梨木香歩、泡坂妻夫、東川篤哉、綾辻行人、長野まゆみ、大崎梢、恒川光太郎、吉田篤弘、上橋菜穂子、岡田淳、R・ダール、E・ケストナー、などなど。気になりゃ何でも読みます。

子どもたちに物語の面白さを伝える、そんな駄菓子屋のような古本屋を目指します。

「古本 大吉堂」大阪市阿倍野区王子町3−4−4




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