『こんや円盤がやってくる』(福島正実)



まずはタイトルと表紙のイラストに心掴まれました。そして作者のお名前に見覚えが。どなただったっけ? と考えども思い出せず。はてさて? 解説を読むと初代『SFマガジン』の編集長を経て作家になられたのだとか。その流れでお名前をお見掛けしたのでしょう。
子ども向けのSFが2編収録されています。タイムスリップものと宇宙人との遭遇もの。どちらも基本となる知識を押さえつつ、ドキドキハラハラとドキドキワクワクがギュッと詰まった作品です。日常の中にポンとSF的要素が飛び込んでくるというのは、ドラえもんをはじめ子ども向けSFの常套ですが、ここでも子どもたちの日常に(それも子どもならではのシチュエーションで)不意に不思議が飛び込んできて、不意に冒険が始まります。もしかしたら自分の身にも不思議が訪れるかも。そんな気持ちになる物語です。
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『離島の本屋』(朴順梨)



島には妙な憧れがあります。決して住むことはできないでしょうから妙な気持ちなのですが。島に住むというのはどんな感じなのでしょうね。
そんな思いを持っているので、この本を見た瞬間興味津々になったのです。島で営業する本屋を訪れる、ただそれだけなのに引き込まれます。元々フリーペーパーに連載されていたものということで、分量が少なめでもっと知りたいもっと教えてほしいという気にさせられます。島といえど地方都市の小さな町と同じと感じる部分もあり、周りを海で区切られているという特異性を感じる部分もあり。一昔前ならどんな町にでも本屋があって当たり前だったのが、今や大きな町ですら本屋がない状態。そんな中で島にある本屋というのは、町の本屋の根幹となる部分がある気もしますが、きっと島の人にとってはごく普通の景色なのでしょう。
これを読むことで自分の中にある妙な島への気持ちは整理できた訳もなく、今もまだ妙な気持ちのまま心に浮かんでおります。

『龍使いのキアス』(浜たかや)



初代皇帝アグシャトルの夢の呪縛にとらわれているアギオン帝国。巫女見習いのキアスは、巫女の力が弱まっている原因を探るべく、大巫女のマシアンを探す旅に出る。それはキアス自身の出生の秘密に突き当たるものだった。
本自体ぶ厚いのですが、作品世界も重厚でした。見習いから正式な巫女になるための呼び出しの儀式。夢を見ない皇帝。犬の骨から作られた戦士。夢と繋がっている世界、などなど。ひとつひとつの要素が魅力的です。
また登場人物だれもが何かに縛られており、その中で自分とは何かを追求している。ひとりひとりが自分の生き方を模索することから、帝国の運命が動き出す。個人を描くことが全体を見渡すことになる大河ドラマ的感覚が面白いです。
ファンタジーが好きな人に是非お勧めしたい物語です。児童書の形で出されているため、目に届いていない人が多いのかも知れません。そういう作品をもっと紹介していきたいです。

『となりのウチナーンチュ』(早見裕司)



沖縄で作家志望の父親とふたり暮らしの彩華は、ある朝置物のカエルの声を聞く。カエルは神だと名乗り、隣に引っ越してくる人と会うことで彩華の人生が面白くなると言う。
少し不思議な現象を扱いながら、16歳の少女の抱える問題や沖縄の日常を真っ直ぐ描いています。
母親の過干渉、いじめられていた友達を救えなかった後悔、クラスメイトや学校に馴染めなかったことなどなど、どれもひとつだけでも大きな問題ですが、それを受け止めると決めた心と周りの人たちの支えで乗り越える姿に焦点が当てられています。なので、あっさりとしているようにも見えますが、自分がどう向き合うかが、この作品での主幹なのでしょう。
沖縄の日常も、基地問題や貧困問題などをサラリと書き、そのもの自体には深入りしていません。しかし引っ越してきた親子にとって沖縄に来たことが救いになった。そのことが大切なのでしょう。観光地も青い空も伝統文化も出てきませんが、そこにはまぎれもない沖縄があります。

『だれも知らない国で』(星新一)



自分に瓜二つな少年を追いかけている内に、ぼくは他人の夢の世界に入り込んだのだった。
ショートショートで有名な星新一の長編作品。現在は『ブランコのむこうで』というタイトルで文庫化されています。
病気の少年は夢で王子となり自由自在に遊びまわり、人に騙されてつらい目に遭った人は独裁者となり、子どもを亡くした人は夢で子どもを探す。
理想を追い求めた男がたどり着いた先にあったものとは? 赤ちゃんが見る夢とは? などなど考えさせられることも多く、人の夢を見ることでぼくは人の内面を知るようになります。
味わい深くていねいな文章のもつ柔らかさと、人の内面を描く鋭さを併せもった物語でした。
プロフィール

大吉

Author:大吉
物語の魅力を伝える古本屋をやっています。

好きな作家は、有栖川有栖、田中芳樹、江戸川乱歩、倉知淳、恩田陸、北村薫、宮部みゆき、京極夏彦、小川洋子、殊能将之、梨木香歩、泡坂妻夫、東川篤哉、綾辻行人、長野まゆみ、大崎梢、恒川光太郎、吉田篤弘、上橋菜穂子、岡田淳、R・ダール、E・ケストナー、などなど。気になりゃ何でも読みます。

子どもたちに物語の面白さを伝える、そんな駄菓子屋のような古本屋を目指します。

「古本 大吉堂」大阪市住吉区遠里小野5−3−1




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