『自閉症の僕が跳びはねる理由』(東田直樹)

自閉症の僕が跳びはねる理由 (角川文庫)
自閉症の僕が跳びはねる理由 (角川文庫)

NHKのドキュメントで彼のことを知り、この本の存在も知り気になっていたのです。やっと読むことができました。自閉症である自分のことについて世間の人が思っている疑問に答えるという一問一答の形で書かれています。

文字ボードを使ってコミュニケーションをしている姿や、その言葉のわかりやすさに驚嘆させられました。自閉症の人はコミュニケーションができないのではなく、苦手なのだということを彼の姿を見ることでわかったのです。
この本でも質問に対して真摯にそしてわかりやすく答えられています。このわかりやすい答というのは、自閉症でない読者のことを想像するからこそ生まれるものでしょう。相手のことを慮ってこその言葉でしょう。そこにも自閉症の人たちへの偏見を覆すものがあります。

もちろん自閉症の人全てが彼と同じではないでしょう。それは何事に於いても意識しなければならないことです。でも自分と違う人が自分と同じものを感じたり、やはり自分と違うものを感じている。そんな当たり前のことを知るきっかけとなる本でしょう。
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『センス・オブ・ワンダーを探して』(福岡伸一、阿川佐和子)



生物学者福岡伸一ハカセとインタビューの名手阿川佐和子の対談。「センス・オブ・ワンダー」、「動的平衡」をキーワードに展開されます。
ある分野に精通しているひとの話を聞くことは面白いです。しかも専門分野の専門的なことを一般の人々にもわかる言葉で語ってくれることの素敵さ。ここでもハカセの言葉は綺羅星の如く輝きながら我々の元に届きます。しかしその言葉はキラキラしているだけではなく、血肉をもった言葉として沁み入ってくるのです。それはもちろん阿川佐和子という聞き上手の人のフィルタを通すからより一層言葉すさの浸透率が高まるのでしょう。
動的平衡の元では個々を分割して見ず、全体の流れを見る。しかしそのことは個々を軽んじることではなく、個々をしっかりと重んじることによってこそ全体が豊かになる。これは生物学に留まらず社会にも何にも全てに関わることなのでしょう。そう、それこそが動的平衡による世界なのでしょう。
子どもの時に出逢った驚きや喜びは、その人の人格形成に大きく関わる。それを示すエピソードも素敵です。そのためには子どもの心を受け止める大人の存在が不可欠である。さて自分はそんな大人になっているのだろうか。そして自分はそんな経験を経たのだろうか。しかしいつでもセンス・オブ・ワンダーの恩恵は受けることができるでしょう。ちょうどこの本を読んで生まれた心の煌めきも、センス・オブ・ワンダーなのでしょう。

『こんや円盤がやってくる』(福島正実)



まずはタイトルと表紙のイラストに心掴まれました。そして作者のお名前に見覚えが。どなただったっけ? と考えども思い出せず。はてさて? 解説を読むと初代『SFマガジン』の編集長を経て作家になられたのだとか。その流れでお名前をお見掛けしたのでしょう。
子ども向けのSFが2編収録されています。タイムスリップものと宇宙人との遭遇もの。どちらも基本となる知識を押さえつつ、ドキドキハラハラとドキドキワクワクがギュッと詰まった作品です。日常の中にポンとSF的要素が飛び込んでくるというのは、ドラえもんをはじめ子ども向けSFの常套ですが、ここでも子どもたちの日常に(それも子どもならではのシチュエーションで)不意に不思議が飛び込んできて、不意に冒険が始まります。もしかしたら自分の身にも不思議が訪れるかも。そんな気持ちになる物語です。

『離島の本屋』(朴順梨)



島には妙な憧れがあります。決して住むことはできないでしょうから妙な気持ちなのですが。島に住むというのはどんな感じなのでしょうね。
そんな思いを持っているので、この本を見た瞬間興味津々になったのです。島で営業する本屋を訪れる、ただそれだけなのに引き込まれます。元々フリーペーパーに連載されていたものということで、分量が少なめでもっと知りたいもっと教えてほしいという気にさせられます。島といえど地方都市の小さな町と同じと感じる部分もあり、周りを海で区切られているという特異性を感じる部分もあり。一昔前ならどんな町にでも本屋があって当たり前だったのが、今や大きな町ですら本屋がない状態。そんな中で島にある本屋というのは、町の本屋の根幹となる部分がある気もしますが、きっと島の人にとってはごく普通の景色なのでしょう。
これを読むことで自分の中にある妙な島への気持ちは整理できた訳もなく、今もまだ妙な気持ちのまま心に浮かんでおります。

『龍使いのキアス』(浜たかや)



初代皇帝アグシャトルの夢の呪縛にとらわれているアギオン帝国。巫女見習いのキアスは、巫女の力が弱まっている原因を探るべく、大巫女のマシアンを探す旅に出る。それはキアス自身の出生の秘密に突き当たるものだった。
本自体ぶ厚いのですが、作品世界も重厚でした。見習いから正式な巫女になるための呼び出しの儀式。夢を見ない皇帝。犬の骨から作られた戦士。夢と繋がっている世界、などなど。ひとつひとつの要素が魅力的です。
また登場人物だれもが何かに縛られており、その中で自分とは何かを追求している。ひとりひとりが自分の生き方を模索することから、帝国の運命が動き出す。個人を描くことが全体を見渡すことになる大河ドラマ的感覚が面白いです。
ファンタジーが好きな人に是非お勧めしたい物語です。児童書の形で出されているため、目に届いていない人が多いのかも知れません。そういう作品をもっと紹介していきたいです。
プロフィール

大吉

Author:大吉
物語の魅力を伝える古本屋をやっています。

好きな作家は、有栖川有栖、田中芳樹、江戸川乱歩、倉知淳、恩田陸、北村薫、宮部みゆき、京極夏彦、小川洋子、殊能将之、梨木香歩、泡坂妻夫、東川篤哉、綾辻行人、長野まゆみ、大崎梢、恒川光太郎、吉田篤弘、上橋菜穂子、岡田淳、R・ダール、E・ケストナー、などなど。気になりゃ何でも読みます。

子どもたちに物語の面白さを伝える、そんな駄菓子屋のような古本屋を目指します。

「古本 大吉堂」大阪市阿倍野区王子町3−4−4




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