『炎路を行く者 守り人作品集』(上橋菜穂子)



シリーズ後半に出て来たヒュウゴの少年時代を描いた中編と、シリーズ主人公のバルサの少女時代を描いた短編。どちらも本人による回想という形で物語に誘われます。
ヒュウゴは確かに印象深い人物ではありましたが、外伝で主人公になるほどの役回りだっただろうかといぶかしくも思いましたが、読んでみるとなるほど彼を描くことで守り人シリーズの核となるものが浮き彫りになるのだと気付きました。
何を信じて何のために生きるのか。それは自らが信じていたもの生きる目的としていたものを奪われ無くしたからこそわかるものでもあったのでしょう。目の前のことでいっぱいになった時に、自分を高見に放り投げてくれる人の言葉。それにより視野が広がること。果たして成長した自分は誰かを高見へと導くことができるのだろうかという想い。それは2編ともに通じるものとして書かれていました。そしてそれが守り人シリーズが書いてきたものだと思うのです。シリーズ本編が完結した今だからこそ、より一層ヒュウゴのバルサの若き日の荒々しい猛りがシリーズの核を見せてくれます。
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『物語ること、生きること』(上橋菜穂子)



作家・上橋菜穂子の作家になるまでの生い立ちや、作品創作についてのインタビューをまとめた本。なぜ本人によるエッセイという形でなく他人の手を介する形にするのだろうという疑問がありましたが、あとがきに相当する部分を読むと、インタビューという形で他人が介することで引き出されるものもあり、自分のことを自分で語る以上のものが出てくるのだということがわかり、なるほどと目から鱗の落ちる思いでした。
上橋菜穂子の作品には「こちら側」と「あちら側」の境界線が舞台となることが多く、またその両方を行き来する人が出てくることも多いです。それが魅力となっているのですが、これを読むとなるほどここからあの物語たちが生まれてくるのかと思わされます。
作家になりたくて作家になるにはどうすればいいのかを考え進んでいく。まっすぐな想いはまっすぐな眼差しとなり突き進む指針となる。その指針は今この時に物語が好きだという子らや、作家になりたいと思う子らの指針ともなるのでしょう。

『鹿の王』(上橋菜穂子)

鹿の王 (上) ‐‐生き残った者‐‐
鹿の王 (下) ‐‐還って行く者‐‐

犬に噛まれたことによって起こる死の病を追う医者と、その犬に噛まれながら生き延びた逃亡奴隷の目を通しながら、異なる民族間での争いを描く。
これを異世界もので行なうのが、大変だったろうなと思います。医学の進歩の過程を設定しなければ、病の元に辿り着くことができないので、その流れをも登場人物の口を通して説明するのですから。
またその病にどう対応するかという点に於いても、征服者と被征服者の関係やそれぞれの民族の持つ倫理観などが入り交じり、単純に病を治す方法が判ればよいというものではないことも物語に奥行きを持たせます。陰謀と陰謀を掛け合わせるような感じなので陰鬱な感じになりがちなのですが、医者であるホッサルの真っ直ぐさと、もう一人の主人公ヴァンが手にする人との営みの描写が温かみを与えてくれます。
民族を越えてひとつの共同体となる姿を見せて、希望へ向けて終わる。そこが実に上橋菜穂子らしい終わり方でした。

『流れ行く者 守り人短編集』(上橋菜穂子)

流れ行く者: 守り人短編集 (新潮文庫)

女用心棒バルサの少女時代を描いた番外編短編集。本編が大きなうねりに抗いながら戦う姿を描いていたので、それに比べて地味に感じる部分もあります。しかし世界から外れてしまった人々のそれでも行きていく姿をじっくりと描いていて感じ入りました。それも世界を丁寧に描いているからこそなのでしょう。架空世界をしっかりと描くことで、その中からはみ出した人たちの姿も浮き彫りになるのでしょうから。
そんな中、少年タンダとバルサの交流が微笑ましくて、そして微笑ましいだけでないぶつかりもあって心に残りました。

テーマ : 読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

『獣の奏者 闘蛇編、王獣編』(上橋菜穂子)

獣の奏者 1闘蛇編 (講談社文庫)
獣の奏者 2王獣編 (講談社文庫)

全てが文庫化されるのを待とうかと思ったのですが、我慢出来ずまずは一区切りになる2巻までを読みました。それも一気読みですね。グイグイと惹き付けられ、物語を駆け抜けてしまいました。
決して人に懐かぬ王獣との心のやり取りを描いた動物ものとしてだけでなく、数奇な運命を背負った少女の成長記としてだけでなく、王国の成り立ちの秘密と政治的流れを描いた架空歴史物としてだけでなく、色々な要素が絡み合い魅力となっています。それに加えて数々の謎が物語を引っ張り、ラストの一点に集約される様は身震いするほどでした。なるほど、これは余りにも完璧な終わり方。でも是が非でも続きが読みたくなる終わり方ですね。
また主人公エリンの魅力も、もちろん物語の引っ張る力となっています。弱い部分も含めて自分に真っ直ぐ正直な姿が(それが痛々しく思えることもあるのです)素敵です。

テーマ : 読んだ本
ジャンル : 本・雑誌

プロフィール

大吉

Author:大吉
物語の魅力を伝える古本屋をやっています。

好きな作家は、有栖川有栖、田中芳樹、江戸川乱歩、倉知淳、恩田陸、北村薫、宮部みゆき、京極夏彦、小川洋子、殊能将之、梨木香歩、泡坂妻夫、東川篤哉、綾辻行人、長野まゆみ、大崎梢、恒川光太郎、吉田篤弘、上橋菜穂子、岡田淳、R・ダール、E・ケストナー、などなど。気になりゃ何でも読みます。

子どもたちに物語の面白さを伝える、そんな駄菓子屋のような古本屋を目指します。

「古本 大吉堂」大阪市住吉区遠里小野5−3−1




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