『なにごともなく、晴天。』(吉田篤弘)



どこかにありそうで、どこにもなさそうな物語。高架下の商店街の古道具屋の店番である私の日常。
のんびりほっこりふわふわしているようで、出てくる人物ひとりひとりがきちんと地に足ついているようにも思える。それはみんなそれぞれ秘密をもち、過去をもち、今を生きて、未来を見ているからなのかも。
この「なんでもない話」を面白い小説に仕立てるのが、吉田篤弘という作家のすごさ。映像的なのだけど、映像にすると空白があり過ぎてしまうような。こんな作品も小説ならではなのでしょう。
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『針がとぶ Goodbye Porkpie Hat』(吉田篤弘)

針がとぶ

何てことない何気ない日常が描かれながらも、少しだけ地面から足が浮いているように感じる。それが吉田篤弘の作品。作品世界の居心地が好く、いつまでも読んでいたいと思わされます。
詩人である叔母の遺品を整理する姪、人の来ない遊園地の駐車場、クロークに忘れられたコート、何でもある雑貨屋パスパルトゥ、ケージから消えた磁石を飲み込んだ猿。それぞれ独立した物語かと思いきや、見えるような見えないような糸で繋がれていました。時間系列をずらして配置することで、それぞれの物語の独自性と繋がりが浮き出ています。

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『小さな男*静かな声』(吉田篤弘)

小さな男*静かな声 (中公文庫)

いかにも吉田篤弘と称すればよいのか。タイトル通り小さな男と静かな声の語りが淡々と続きます。しかもそれぞれのパートが一人称の部分と三人称の部分が交互に展開されるので、ひとつの事象に対してカメラが引いたり寄ったりする感覚が面白いです。しかも小さな男と静かな声も近寄ったりもするので、その交叉する部分も面白いです。
淡々とした文章が心地好く、文章に身を任せる快感も素敵でした。

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『百鼠』(吉田篤弘)

百鼠 (ちくま文庫)

吉田篤弘の作品は現実から少し浮遊していて、その文章の狭間で泳ぐような浮遊感が好きなんです。大きな物語の始まりだけを集めた作品。3つの物語がお互いにどこかで影響し合い、人称の問題を含みながら紡ぎ出される言葉たち。自転車を拾った男の恋の話、三人称小説に於ける神の声を発する朗読鼠、母親の小説に描かれる私の想い、どれも文章の海に漂う心地好さを味わえます。

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『78』(吉田篤弘)

78 (小学館文庫)

78回転のSP盤から繋がる物語。少年たちは冒険の末に終着駅でSP盤を見付け、ドーナツ屋の隣にはSP盤の専門店があり、SP盤に吹き込まれた曲の演奏者にも物語があり、世界は78回転で回り続ける。
少し現実から浮いた物語です。その浮遊感が何とも言えず気持ちいいんです。作り込まれているんだけど、さり気なくそれとなく自然体に書かれているのがいいんですね。

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プロフィール

大吉

Author:大吉
物語の魅力を伝える古本屋をやっています。

好きな作家は、有栖川有栖、田中芳樹、江戸川乱歩、倉知淳、恩田陸、北村薫、宮部みゆき、京極夏彦、小川洋子、殊能将之、梨木香歩、泡坂妻夫、東川篤哉、綾辻行人、長野まゆみ、大崎梢、恒川光太郎、吉田篤弘、上橋菜穂子、岡田淳、R・ダール、E・ケストナー、などなど。気になりゃ何でも読みます。

子どもたちに物語の面白さを伝える、そんな駄菓子屋のような古本屋を目指します。

「古本 大吉堂」大阪市住吉区遠里小野5−3−1




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