『くちびるに歌を』(中田永一)

くちびるに歌を (小学館文庫)

五島列島の中学校の合唱部を舞台にした物語。コンクール出場に向けての練習、女子と男子の諍い、15年後の自分へ送る手紙、それぞれの想い。実に真っ直ぐな青春小説でした。
自閉症の兄をもち「ぼっち」でいようとする少年、病気の母と自分を捨てた父親の影響で男性不信に陥っている少女、自らを「ニート」と称する女性教師、表裏のありそうな清楚な少女。いかにもこの作者らしい人物が並んでいます。そしてどの人物の心境も胸に迫ります。でも、いつもほど尖っていないんですね。それはコミュニティから外れた人物を描くことが目的でないからでしょうか。みんなそれぞれ色々な想いを胸に秘め、それぞれ違った「自分」を生きている。そんな「みんな」が合唱を通じて「ひとつ」になる様が素敵です。
また少年視点のパートと少女視点のパートが交互に示されるのですが、あまり接点のないふたりなんですね。なので、それぞれのパートにもう片方の主人公はちらりとしか出てきません。それがラスト一体となる。この構成の妙も素敵です。そこに至る伏線の張り方などは、この作者ならではの味わいでしょう。
泣けるというよりは自然に背筋が伸びる、そんな読後感でした。
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Author:大吉
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好きな作家は、有栖川有栖、田中芳樹、江戸川乱歩、倉知淳、恩田陸、北村薫、宮部みゆき、京極夏彦、小川洋子、殊能将之、梨木香歩、泡坂妻夫、東川篤哉、綾辻行人、長野まゆみ、大崎梢、恒川光太郎、吉田篤弘、上橋菜穂子、岡田淳、R・ダール、E・ケストナー、などなど。気になりゃ何でも読みます。

子どもたちに物語の面白さを伝える、そんな駄菓子屋のような古本屋を目指します。

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