『どこから行っても遠い町』(川上弘美)
図書館の読書会の課題図書として読みました。
電車の窓から町の風景を見るのが好きです。ごく普通の住宅地を飽きずに眺めています。立ち並ぶ家々の窓の向こうには住む人がいて、それぞれ「生活」があるのだろう。そんなことを思いながら、ぼーっと眺めています。
この本を読んで、ふとそんなことを思いました。
古い商店街のある町に住む人々の日常。日常と言えど、それぞれの形があり、それぞれの想いがある。狂言回しとなるような人物や場所を据えず、それぞれの話の登場人物が何となく繋がり重なる。人の営みが集まり町となる。人の想いが集まり町となる。
日常を描いているのにファンタジーじみて感じるのは、作者川上弘美の掌上に世界があり、作者のまなざしを感じるからでしょうか。そのまなざしは温かいのに、よそよそしく愛想ない。だから登場人物たちは、作者の掌上で思い思いの生活を営むのでしょう。
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