『海辺の王国』(ロバート・ウェストール)



空襲で家と家屋を失ったハリーは、犬とともに海辺を歩き自らの居場所を探すのだった。
12才の少年が戦時下をひとり生きるために歩き続ける。出会う大人たちは皆、ハリーに自分の想いをぶつける。それは善意であったり、悪意であったり、欲望であり希望であり優越感であるかも知れない。そんな様々な大人たちと出会い言葉を交わしていく中で、ハリーは変わっていく。それは少年が成長することでもあろうし、時代と運命に翻弄されて変わらざるを得なかったということかも知れない。
変わるのは少年ばかりでなく大人も時代と運命に翻弄され変わっていく。ハリーがようやく自分の居場所である王国を見付けたと思った瞬間に失意のどん底に落とされるのも、そんな変わってしまった大人によってのこと。最後の最後で読後感が悪くなるような展開なのに、決してそうはなりません。それはハリー自身の変化(成長)がそんな大人の事情を超越し、自らの力で王国を掴もうとする希望を胸に秘めているからでしょう。王国を見付けてめでたしめでたしと締めるのでなく、王国を見付けることのできる人間になったことを暗に示す。そのことによって希望の灯を見せる。そんな素敵なラストに衝撃を受けました。
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Author:大吉
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好きな作家は、有栖川有栖、田中芳樹、江戸川乱歩、倉知淳、恩田陸、北村薫、宮部みゆき、京極夏彦、小川洋子、殊能将之、梨木香歩、泡坂妻夫、東川篤哉、綾辻行人、長野まゆみ、大崎梢、恒川光太郎、吉田篤弘、上橋菜穂子、岡田淳、R・ダール、E・ケストナー、などなど。気になりゃ何でも読みます。

子どもたちに物語の面白さを伝える、そんな駄菓子屋のような古本屋を目指します。

「古本 大吉堂」大阪市住吉区遠里小野5−3−1




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