『ケンブリッジ・サーカス』(柴田元幸)



翻訳家としても著名な柴田元幸による場所に因んだエッセイ。
過去に住んでいた土地、または訪れた土地に立つことによって、過去の自分と対峙する。過去の自分を見て、過去の自分から見られる。時間をひょいと交差させながら、虚と実も交わらせる。その筆遣いが実に心地好い。
またそれぞれの場所によって小説風になったり、日記風になったり、対談形式になったりと語り口が変えられているのも面白い。特別付録にいたっては、原稿用紙に書かれた直筆そのものを印刷したものなのですから。これは様々な文体を自分の筆で表わし直す翻訳家としての成せる技なのでしょうか。でも全体に流れる空気は同じような感覚で、少し自分を引っ込めて描くため、その場所その場所にいる人々が浮かんで見えてきます。しかしそれでいながら、その他者の中に過去の自分を紛れ込ませて、最終的には自分をも浮かび上がらせていることに気付かされるのです。
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Author:大吉
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好きな作家は、有栖川有栖、田中芳樹、江戸川乱歩、倉知淳、恩田陸、北村薫、宮部みゆき、京極夏彦、小川洋子、殊能将之、梨木香歩、泡坂妻夫、東川篤哉、綾辻行人、長野まゆみ、大崎梢、恒川光太郎、吉田篤弘、上橋菜穂子、岡田淳、R・ダール、E・ケストナー、などなど。気になりゃ何でも読みます。

子どもたちに物語の面白さを伝える、そんな駄菓子屋のような古本屋を目指します。

「古本 大吉堂」大阪市住吉区遠里小野5−3−1




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