『エアボーン』(ケネス・オッペル)



予備知識を全くもたず、本にはあらすじも書かれておらず、作者名もタイトルにも覚えがない。それでも何故か面白そうな予感があったのです。それは表紙に描かれた飛行船から得たイメージかも知れません。そして読んでみた処。何とも自分の好みのど真ん中、面白くて面白くて一気に読むのが勿体なくてそれでも読むのをやめたくもない。そんな素敵な物語でした。
感覚としては20世紀初頭でしょうか、飛行船が交通の主要となっている世界が舞台の冒険活劇。飛行船の魅力が綿密に描かれ、乗客としても乗務員としても飛行船に乗る魅力にまず浸ることができます。
コンプレックスも抱えながら自分の夢へと突き進む少年。お転婆で勝ち気でトラブルを巻き起こすけど、やはり自分の夢へと真っ直ぐなヒロイン。このふたりを中心に物語は進みます。登場人物も頼りになる船長、主人公の良き理解者の親友、変人の料理長など個性に富み、そこに空賊の襲来、無人島への不時着、謎の空飛ぶ獣、再び対峙する空賊との争いなどなど、次から次へとドキドキワクワクが展開されます。一難去ってまた一難、しかしところどころに冒険を楽しむ要素も加え、そこに淡い恋心のエッセンスも。何とも贅沢てんこ盛りの娯楽作品に仕上がっています。ああ、こんなにも本を読むことは面白いんだと実感できる素敵な読書時間を味わいました。こういう言い方は余り好きではないのですが、読んでいる最中田中芳樹の冒険活劇を彷彿しました。なので脳内キャラクターデザインはふくやまけいこだったのです。まあこれも読書の楽しみ方のひとつとして。
物語の鍵となる雲猫(クラウドキャット)と名付けられる空飛ぶ獣も魅力的なのです。各章の頭に挿絵があるのですが、この雲猫については作中の描写のみで絵としては表わされていないのです。なかなか奇抜な見た目になるのではないかという描写もあるのですが、全体に美しく優雅な姿をも思い浮かべることができます。これは絵として表わされていないが故の想像力でいかようにも膨らませることのできる魅力なのでしょう。その反面もうひとつの鍵となる飛行船に関しては巻頭に展開図を用いてしっかりと説明されているのです。これはその説明(図)が魅力を促すものになるからでしょう。そういう見せ方も素敵です。この作品は是非アニメ映画になって欲しいと思ったのです。飛行船の魅力は映像で見てみたいと思ったのです。でも雲猫に関しては映像で見てしまうと違和感も生まれるのかも知れないなとの思いもあります。
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大吉

Author:大吉
物語の魅力を伝える古本屋をやっています。

好きな作家は、有栖川有栖、田中芳樹、江戸川乱歩、倉知淳、恩田陸、北村薫、宮部みゆき、京極夏彦、小川洋子、殊能将之、梨木香歩、泡坂妻夫、東川篤哉、綾辻行人、長野まゆみ、大崎梢、恒川光太郎、吉田篤弘、上橋菜穂子、岡田淳、R・ダール、E・ケストナー、などなど。気になりゃ何でも読みます。

子どもたちに物語の面白さを伝える、そんな駄菓子屋のような古本屋を目指します。

「古本 大吉堂」大阪市住吉区遠里小野5−3−1




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