『エヴァが目ざめるとき』(ピーター・ディッキンソン)



ネタばれといいますか、最初の衝撃を書かずには感想を展開できないのでそれは書きます。

13歳の少女エヴァは事故により体を失い、その記憶をチンパンジーの脳に移された状態で目覚めるのだった。
チンパンジーの体に少女の思考と記憶という衝撃的な始まりですが、エヴァが幼少時から父親の研究の関係でチンパンジーと共に育ったため思うよりは抵抗少なくその状況を受け容れます。エヴァ自身よりも周りの人々の方が戸惑い、どのように彼女に接すればいいのかを逡巡する場面も見えます。そのことについてエヴァ自身も気付いており、自分から他人はそのままだが他人からは見た目がチンパンジーであるという部分が大きいためだろうと推測する。そのように実にエヴァは聡明で本当に13歳の少女なのだろうかと思える場面が多々あります。それは天性のものなのか、自分の運命を受け容れたから得た達観した観念なのかどうなのか。
エヴァ自身の内的葛藤よりも、エヴァと社会の葛藤に物語の焦点は合わさります。エヴァの記憶を移した元のチンパンジーの記憶は消去されているのですが、その記憶の奥にある本能のようなもの、種が持っている記憶は残り、そのためエヴァは自分が人間として生きるのかチンパンジーとして生きるのかを悩みます。舞台となっている近未来の世界では、人々は屋内に閉じこもりシェーパーと呼ばれる立体テレビを見続けている。そんな人間という種の未来がどこに行くのか。それをチンパンジーの体とその種の記憶を引き継いだエヴァが静かに見つめます。
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Author:大吉
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