『ぼくには数字が風景に見える』(ダニエル・タメット、古屋美登里・訳)



著者のダニエル・タメットには様々なレッテルが貼られるでしょう。例えばサヴァン症候群であるとか、アスペルガー症候群であるとか、幼少時にてんかんを起こしたとか、9人兄弟の大家族で育ったとか、ゲイで同性のパートナーがいるだとか、円周率の暗唱でヨーロッパ記録を樹立しただとか。でもこの本はそれぞれのレッテルとなるものの説明ではなく、それらが集まりひとりの人間として形作られ生きてきた道のりを表わすものなのです。
数字や言葉が形や色を伴って認識される共感覚についても、実にわかりやすく説明されています。しかしそのこと自身が主幹になるのでなく、あくまで著者のこれまでの生い立ちが主幹となります。彼の生い立ちを述べるにあたり必要だから説明されているという感じさえもあります。
またアスペルガー症候群に関しては、今までフィクション、ノンフィクションに関わらず様々な本やテレビなどで情報を得たり、実際に当人と話したりしたことはあります。でも当人によってどのように世界が見えているのか、どんなことが困るのか大変なのかが書かれているものを読むと認識がガラリと変わる部分もありましたし、今まで気付いてなかったことに気付かされることも多くありました。これは著者の文章能力に負う部分も大きいでしょう。そして障がいを持っていてもも前を向いて進んでいった彼の性格があってこそなのでしょう。もちろんこれはアスペルガー症候群全てに当てはまることでなく、あくまでダニエル・タメットというひとりの人物の話でしょうが。
しかしそのようにひとりの人物の自伝でありつつも、やはり様々な同じレッテルを貼られた人たちへの応援や支えともなる一冊なのでしょう。いや、レッテルに関わらず全ての人への応援や支えとなるものなのかも知れません。誰にだってできることとできないことがある。その自分のできることに、どれだけ自分は向き合っているのか。そんなことも考えさせられる一冊でした。

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Author:大吉
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