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『こゝろ』(夏目漱石)



そういえばきちんと通読していなかったと、今更ながらに読みました。あれ? 漱石ってこんなにも読みやすかったっけ? と思いながらスルスルと読み進めたつもりだったのですが、実際は普段よりも時間が掛かっていました。これは面白い感覚ですね。読みやすさと読み応えの共存というのでしょうか。
エゴイズムと罪の意識の葛藤。それだけならば、下の「先生と遺書」のみでも書けるのではないか。でもそのできごとを経た上でどのように生きるのか。それが上の「先生と私」で書かれているのでしょう。しかも他者の目から書くことにより、罪を背負った者の姿を浮き彫りにしているのでしょう。またその罪について最後まで明かさないという一種ミステリ的手法により、読者は引き込まれながら先生の内へと入っていくのでしょう。
となれば、中の「両親と私」の立場はどうなるのだろう。てっきり下編のあとで私の思いが書かれ、そこに両親の(死にいく父への)思いが絡むのかと思いきや、先生の遺書のみでぷつりと途切れてしまう。しかし中編の最後、その遺書を読んだ私が死を目前とした父を置いて先生の元へと行く、そのことが答えなのでしょうか。それを書くためにこそ中編は存在しているのでしょうか。
漱石については研究され尽くされているので、その答えもきっと誰かが述べられているのでしょう。しかし今は自分の心の中でしばらくその思いを熟させてみます。
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大吉

Author:大吉
物語の魅力を伝える古本屋をやっています。

好きな作家は、有栖川有栖、田中芳樹、江戸川乱歩、倉知淳、恩田陸、北村薫、宮部みゆき、京極夏彦、小川洋子、殊能将之、梨木香歩、泡坂妻夫、東川篤哉、綾辻行人、長野まゆみ、大崎梢、恒川光太郎、吉田篤弘、上橋菜穂子、岡田淳、R・ダール、E・ケストナー、などなど。気になりゃ何でも読みます。

子どもたちに物語の面白さを伝える、そんな駄菓子屋のような古本屋を目指します。

「古本 大吉堂」大阪市阿倍野区王子町3−4−4




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