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『孤島の冒険』(N.ヴヌーコフ、島原落穂・訳)



海洋調査船のデッキから大波にさらわれた14歳の少年サーシャ。彼が泳ぎついた先は無人島だった。
実話を元にした無人島での冒険譚。14歳の少年が何もないところで必死に生きようとした47日間の記録。物語上の孤島の冒険とは違い、沈没した船が近くに漂流して道具や食料を運び込むことができた訳でもなく、以前に人が暮らしていた跡がある訳でもなし、原住民がいる訳でもなし。本当に何もないところで、今まで得た知識と勇気を総動員して必死に生きようとした姿が描かれています。
たまたまポケットにあった小さなナイフ、たまたま島に流れ着く漂流物、そんなものだけで生きるためのあれこれを作り出していく。風雨をしのぐにはどうすればいいのか? 寒さから身を守るには? 火をおこすことはできるのか? 食べ物の調達はどうするのか? サーシャの生きたいと思う心がそれらの困難を乗り越える糧となります。
生きるとはどういうことなのか。今までの生活への悔恨。そのようなものもサーシャの胸をよぎります。それも時間があるが故の思いの漂泊ではなく、生きることに精一杯だったからこそよぎるものとして表れてきます。
そして父への思い。父の言葉ひとつひとつを思い起こし、それを生きていくための指針とする。だからこそラストシーンの父への思いが胸を突きます。必死になって生きてきたのに、父親からはもう死んだものと思われていたという場面で物語は幕を閉じます。父親との再会シーンは描かれていないのです。ショックだったのだろうか、それとも父の思いを乗り越えて生き残ったことを誇りとするのか。その後のサーシャの姿を思い描きながら本を閉じました。
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大吉

Author:大吉
物語の魅力を伝える古本屋をやっています。

好きな作家は、有栖川有栖、田中芳樹、江戸川乱歩、倉知淳、恩田陸、北村薫、宮部みゆき、京極夏彦、小川洋子、殊能将之、梨木香歩、泡坂妻夫、東川篤哉、綾辻行人、長野まゆみ、大崎梢、恒川光太郎、吉田篤弘、上橋菜穂子、岡田淳、R・ダール、E・ケストナー、などなど。気になりゃ何でも読みます。

子どもたちに物語の面白さを伝える、そんな駄菓子屋のような古本屋を目指します。

「古本 大吉堂」大阪市阿倍野区王子町3−4−4




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