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『旅のスケッチ』(トーベ・ヤンソン、冨原眞弓・訳)



トーベ・ヤンソンによるムーミン以前の短編小説集。
どの作品に出てくる人たちもどこか役割を演じているような、背景すらも書割りであるような雰囲気がありながらも、そこに確然といるという存在感も示しています。そしてそこに出てくる人物たちは、他の人物をまたはその場所自体に役割を与えそこに自分を投影させようとします。謂わば勝手に相手の理想像を作り上げ勝手に失望もし勝手に諦めるのです。
若い女性は芸術家に、老いた男は若い娘に、新婚夫婦は旅行地に対して、芸術家は芸術に対して、故郷を去ったものは故郷に対して自分の理想と諦めをぶつけていく。果たして現実は何処にあるというのか。
それでいて読後感は陰惨な感じを与えず、さっぱりとして清々しさすら感じさせます。その清涼感は作者自身が持っていた性質によるものだったのか。諦めの先に未来があることを示唆しているのか。実に面白い感覚でした。
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大吉

Author:大吉
物語の魅力を伝える古本屋をやっています。

好きな作家は、有栖川有栖、田中芳樹、江戸川乱歩、倉知淳、恩田陸、北村薫、宮部みゆき、京極夏彦、小川洋子、殊能将之、梨木香歩、泡坂妻夫、東川篤哉、綾辻行人、長野まゆみ、大崎梢、恒川光太郎、吉田篤弘、上橋菜穂子、岡田淳、R・ダール、E・ケストナー、などなど。気になりゃ何でも読みます。

子どもたちに物語の面白さを伝える、そんな駄菓子屋のような古本屋を目指します。

「古本 大吉堂」大阪市阿倍野区王子町3−4−4




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