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『藍の空、雪の島』(謝孝浩)



ある日ワンディの住む街に戦車に乗ってやってきた黒服の男たち。彼らはワンディたち街に住む人たちを追い出し、とある村に監禁するのだった。
故郷を追われた少年とその家族の物語。黒い服を来た人たちに故郷を追われ労働を強いられる。黒い服の人たちが別の緑の服の人たちに攻撃されている隙に逃げ出す。隣の国に行き、そこでの暮らしが落ち着くかに見えた時また逃げ出さねばならなくなる。途中家族離ればなれとなり、川賊にさらわれる。難民キャンプへと辿り着きイープンへと行く手続きを経て旅立つ。そんな波瀾万丈な出来事が肉薄しつつも、淡々と語られます。
あくまで少年の視点で書かれるので、政治情勢などはほとんど描写や説明がありません。黒い服の人たちはどういう人たちなのか。なぜ故郷を追われなければいけなかったのか。隣国から身を隠すように逃げ出した理由。ワンディはそんなことよりも今を生きること、家族や友達とともにいること、そのためだけに足を進めます。移りゆく土地で出会う友達。なんでもないようなことが喜びになること。信じた人に裏切られること。様々な経験がワンディを通り過ぎていきます。それは余りにも大きく強い流れで、少年の身には抵抗する術もなく押し流されてしまいます。しかしワンディはそこで起こったことを胸に刻み自らの糧へとしていきます。大きな流れはわからなくとも、今自分は何をすべきなのか、どう思うのかを自分でしっかりと考えます。だからこそラスト成長したワンディはある決意をするのです。そんなワンディの目を通すため、つらく悲惨に思われる物語に突き抜けた青空のような爽やかさが伴うのでしょう。
帯の池澤夏樹の推薦文に「ポルポト政権のカンボジアで育った少年の遍歴の記録」とあり、ワンディを取り巻く状況を推し量ることができます。また詳しいことを調べることもできるでしょう。昨今難民と呼ばれる人たちへの侮辱的な言葉が飛び交うこともあります。まずは知ること。その入口にもなる物語でしょう。
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大吉

Author:大吉
物語の魅力を伝える古本屋をやっています。

好きな作家は、有栖川有栖、田中芳樹、江戸川乱歩、倉知淳、恩田陸、北村薫、宮部みゆき、京極夏彦、小川洋子、殊能将之、梨木香歩、泡坂妻夫、東川篤哉、綾辻行人、長野まゆみ、大崎梢、恒川光太郎、吉田篤弘、上橋菜穂子、岡田淳、R・ダール、E・ケストナー、などなど。気になりゃ何でも読みます。

子どもたちに物語の面白さを伝える、そんな駄菓子屋のような古本屋を目指します。

「古本 大吉堂」大阪市阿倍野区王子町3−4−4




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