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『もうひとつのワンダー』(R.J.パラシオ、中井はるの・訳)



『ワンダー』を読んだ時はその前向きさに心が奮えました。親切には勇気を伴うことがある。でもその少しの勇気があれば相手も自分も前へと進むことができる。そのことが実に真っ直ぐに書かれていたのです。
オギーは普通の男の子。顔以外は。そんなオギーとオギーを取り巻く人たちの語りで構成されていた『ワンダー』。そこでは語り手とならなかった三人が今作では語り手となります。オギーをいじめたジュリアン、幼なじみのクリストファー、クラスメイトのシャーロット。『ワンダー』ではあくまでオギーの物語として書かれていましたが、ここでは語り手本人の物語として書かれています。だからこそ書ける物語がありました。そしてこの三人もまた普通の少年少女だったのです。
前作ではいじめっ子として登場しそのままフェードアウトしたジュリアン。彼には彼の物語があり、彼の考えがあったのです。しかしその行動や考えは決して良きものではなかったのです。それにとって反省を促されますが彼は納得ができなかったのです。自分こそが被害者であると思っていたのです。異質な存在が自分の世界に紛れ込んだが故に起こった事件に巻き込まれた被害者であるとしか考えられなかったのです。そのことに対して彼の祖母は自分の体験を語ることで諭すのです。そして彼は自分自身で反省することに行き着くのです。そうジュリアンもまた普通の子だった、ただその普通の子が過ちを犯してしまった。その過ちに気付くことは勇気が必要でした。その勇気によってジュリアンは前へと進むことができたのです。
この描き方の巧さに胸が打たれました。これは児童書だからこそ書くことのできることなのかも知れません。問題に対して真っ直ぐ目をそらさず書くことのできるのが児童書の強みでもあるのでしょう。
そしてもちろんクリストファーにもシャーロットにも自分の物語があります。そのことを示すことによって却ってオギーのことが浮き彫りになることもあり、前作に出てきた他の人々にも思いを馳せることができます。そして『ワンダー』の世界が読み手の中で広がっていくのでしょう。
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大吉

Author:大吉
物語の魅力を伝える古本屋をやっています。

好きな作家は、有栖川有栖、田中芳樹、江戸川乱歩、倉知淳、恩田陸、北村薫、宮部みゆき、京極夏彦、小川洋子、殊能将之、梨木香歩、泡坂妻夫、東川篤哉、綾辻行人、長野まゆみ、大崎梢、恒川光太郎、吉田篤弘、上橋菜穂子、岡田淳、R・ダール、E・ケストナー、などなど。気になりゃ何でも読みます。

子どもたちに物語の面白さを伝える、そんな駄菓子屋のような古本屋を目指します。

「古本 大吉堂」大阪市阿倍野区王子町3−4−4




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