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『海うそ』(梨木香歩)



昭和のはじめ人文地理学の研究者の私は南九州の遅島に赴く。そこは修験者の島であり寺社が連立していたが、明治の廃仏毀釈により寺社は廃れ自然の中に埋もれていた。
島を巡回する私の目に映る島の自然と、そこにあった人々の信仰の跡。物自体はなくなるとも想いがそこに残る。その圧倒的な力の跡を私の目を通して読み手もともに感じます。祈りの対象が何故そこに存在したのか、そして時代に飲み込まれていったのか。それを目の当たりにする衝撃を疑似体験させられます。
最終章で50年のときを経て私は再び遅島に赴きます。そこはリゾート開発され、記憶に残るものものが何もなくなっています。私とともに島の50年前の姿を見ていた読み手も島の変わりように気落ちさせられますが、それは50年前に感じたことの繰り返しに気付かされます。そして以前と変わらぬ海うそ(蜃気楼)を見た時に変わることを受け容れる心が生まれる。変わるものと変わらぬもの。それは表裏一体。その渾然となったものが今を築いているのでしょう。
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大吉

Author:大吉
物語の魅力を伝える古本屋をやっています。

好きな作家は、有栖川有栖、田中芳樹、江戸川乱歩、倉知淳、恩田陸、北村薫、宮部みゆき、京極夏彦、小川洋子、殊能将之、梨木香歩、泡坂妻夫、東川篤哉、綾辻行人、長野まゆみ、大崎梢、恒川光太郎、吉田篤弘、上橋菜穂子、岡田淳、R・ダール、E・ケストナー、などなど。気になりゃ何でも読みます。

子どもたちに物語の面白さを伝える、そんな駄菓子屋のような古本屋を目指します。

「古本 大吉堂」大阪市阿倍野区王子町3−4−4




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