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『バンビ 森の、ある一生の物語』(フェーリクス・ザルテン、上田真而子・訳)

バンビ――森の、ある一生の物語 (岩波少年文庫)
バンビ――森の、ある一生の物語 (岩波少年文庫)

バンビというとディズニーのアニメやキャラクター、もしくは子鹿の愛称というイメージしかない方も多いでしょう。そのイメージで読み始めるとあっという間に覆されます。
ここに書かれているのは自然の全て。美しく雄大な姿だけでなく、厳しく冷淡な姿もまたそのままに書かれています。
生まれたばかりで何も知らず、何にでも興味を示すバンビ。母鹿はそんなバンビにそれらを教えるのですが、中には敢えて教えないことも。読者はバンビの視点で自然と接するので、その教えてもらえないものに対してバンビとともに不安を感じます。そしてついにバンビが「あいつ」に出会った時に、ともに恐怖しショックを受けるのです。
この書き方は実に怖いです。蝶が舞い鳥が歌う、そんな世界から一変するのですから。それは「あいつ」つまり自然に侵入する人間だけでなく、冬の寒さなど幸せに満ちていたと思っていた自然の厳しさもまた容赦なく突き付けられます。今まで光り輝いていた命が消え去る描写は、呆気なく淡々としています。しかしそんな厳しい自然なのに、雄大な美しさはそこにあるのです。それはバンビのストイックとも言える生き方にも現れているでしょう。

母との別れ、雌鹿との恋、古老への憧れ。雌鹿と結ばれて終わるのかと思いきや、バンビは古老とともに生きる道を選び、自らもまた森の古老へとなり次世代を見守るようになるのです。読者はバンビとともに時を過ごし、自然の全てをバンビを通じて感じるのでしょう。
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大吉

Author:大吉
物語の魅力を伝える古本屋をやっています。

好きな作家は、有栖川有栖、田中芳樹、江戸川乱歩、倉知淳、恩田陸、北村薫、宮部みゆき、京極夏彦、小川洋子、殊能将之、梨木香歩、泡坂妻夫、東川篤哉、綾辻行人、長野まゆみ、大崎梢、恒川光太郎、吉田篤弘、上橋菜穂子、岡田淳、R・ダール、E・ケストナー、などなど。気になりゃ何でも読みます。

子どもたちに物語の面白さを伝える、そんな駄菓子屋のような古本屋を目指します。

「古本 大吉堂」大阪市阿倍野区王子町3−4−4




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