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『ピアニッシシモ』(梨屋アリエ)

ピアニッシシモ (講談社文庫)
ピアニッシシモ (講談社文庫)

松葉が幼い頃心慰めてくれた隣家のピアノが譲られた先で出逢った紗英。華やかで自信家の紗英に松葉は惹かれていくのだった。

性格も家庭環境も違うふたりの少女が出逢うことで始まる物語。しかしそこから想定される展開は待っていませんでした。憧れが自己を昇華してくれる訳でもなく、他者を受け容れることで自己が変わっていく訳でもなく。なれ合いでも依存し合うのでもない友情。でも松葉と紗英は出逢うことで、それまでとは違う自分を見付けることになるのです。いや、それまで気付かなかった自分を見付けると言うべきでしょうか。

松葉は自分のことを平凡で良くも悪くも特化していないと思っています。周りに合わせて流される、そんな風にも思っています。しかしそれは松葉に嘘がないからかも知れません。他者に合わせてしまうのは他者への思いを真っ直ぐ見ているため。それは憧れだったり尊敬だったり幻滅だったり諦めだったり。相手への感情に嘘がないので、相手を見る目も容赦ないのかもしれません。それは親や先生への反抗ともなり、友達への想いに繋がる。その松葉の目がこの物語の核となり、松葉の周辺の人々を解体していきます。そして読者は松葉の目を通して、自らの親や友達への思いに気付くのかもしれません。

そんな目をもつ松葉だから、紗英によって変わっていくというよりも自己を確立していくように見えます。だから紗英が物語から逸れて行っても、松葉は自分の道を淡々と進んだのでしょう。そこに本人が気付いていなかったとしても。
何とも面白い読後感がありました。
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大吉

Author:大吉
物語の魅力を伝える古本屋をやっています。

好きな作家は、有栖川有栖、田中芳樹、江戸川乱歩、倉知淳、恩田陸、北村薫、宮部みゆき、京極夏彦、小川洋子、殊能将之、梨木香歩、泡坂妻夫、東川篤哉、綾辻行人、長野まゆみ、大崎梢、恒川光太郎、吉田篤弘、上橋菜穂子、岡田淳、R・ダール、E・ケストナー、などなど。気になりゃ何でも読みます。

子どもたちに物語の面白さを伝える、そんな駄菓子屋のような古本屋を目指します。

「古本 大吉堂」大阪市阿倍野区王子町3−4−4




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