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『ホテルカクタス』(江國香織)

ホテルカクタス (集英社文庫)
ホテルカクタス (集英社文庫)

古びたアパート「ホテルカクタス」に住む三人の物語。と書くとごく普通なのだが、この三人というのが帽子ときゅうりと数字の2なのです。あだ名でも喩えでもなく正真正銘帽子ときゅうりと数字の2。
その三人が部屋で好きな飲み物を手に語らったり、旅に出たり、恋をしたり、詩人ごっこをしたり。その様子がじつに心地好いのです。
三人は友達だけど、ちょうどいい距離を保っているのです。いや友達だからちょうどいい距離を保っているのかも知れません。相手を尊重しながら相手に同調しない。相手が興味を持っているものを一緒に楽しんでみるが、自分に合わなければやめてしまう。自分の意見は言うけれど相手を否定はしない。そんな理想的ともいう間柄を三人は築いているのです。
これは帽子ときゅうりと数字の2だからこそ成し得る関係性なのかも知れません。もともと相手と自分は違うものとわかっているからこそ成し得る関係なのかも知れません。でもそれは同じ人間同士でも言い得ることなのかも。
そんなことが佐々木敦子の少し不安感を煽る風景画によって寓話性を高めて示されるのです。
そして理想的とも言える関係性を築いた三人は、理想的かもしれない別れを迎えるのです。何とも心地好い読後感でした。
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大吉

Author:大吉
物語の魅力を伝える古本屋をやっています。

好きな作家は、有栖川有栖、田中芳樹、江戸川乱歩、倉知淳、恩田陸、北村薫、宮部みゆき、京極夏彦、小川洋子、殊能将之、梨木香歩、泡坂妻夫、東川篤哉、綾辻行人、長野まゆみ、大崎梢、恒川光太郎、吉田篤弘、上橋菜穂子、岡田淳、R・ダール、E・ケストナー、などなど。気になりゃ何でも読みます。

子どもたちに物語の面白さを伝える、そんな駄菓子屋のような古本屋を目指します。

「古本 大吉堂」大阪市阿倍野区王子町3−4−4




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